相模原みのり塾

 毎週日曜日の午後、相模原市JR橋本駅前のイオンショッピングセンターの上階にある公民館で『相模原みのり塾』は開かれています。取材に訪れた日は、生徒さんとボランティア講師の方々総勢40名以上が学習に取り組んでいました。

 (取材:桜井 薫)

 

代表の小布施さんが無料塾を始めたきっかけ

 2011年、東日本大震災の被災地で東京の大学生が学習支援のボランティアをしているのを見て、自分でも何かできないかと考えていた小布施さんは、勉強を教えることならできるのではないかと思ったといいます。当時、子どもも小さく被災地には行けなかったが、八王子市の無料塾にボランティア講師として参加。2年半活動するうちに「地元の相模原市で子どもたちに関わりたい」と思うようになり、様々な人や相模原市社会福祉協議会のサポートを受け準備を進めました。

 

左から 副代表:中村敦彦さん  副代表:山口幸大さん 代表:小布施実穂子さん


創造授業

取材日のテーマは、「色の3原色」の理科実験

家庭の経済格差を教育格差にしない社会の実現をめざして

 2016年5月、『相模原みのり塾』は経済的な理由で塾に通えない中学生を対象に学習支援を行う無料塾としてスタートしました。交通費も自腹の完全ボランティアの講師の皆さんは、かわいそうだからではなく子どもたちの「学び」を助けたい、地域の大人の責任として、未来を担う子どもたちへの投資としてという考えをもっての参加でした。

入塾条件は3つ

1.勉強ができるようになりたいという気持ちが強いこと

2.他の有料塾に通っていたり、家庭教師に習っていないこと

3.ご家庭が経済的に困難であること

 経済的困難の明確な基準はなく、収入証明のような書類の提出は求めていません。「支出が多いので教育費にはかけられない」という理由と区別するため、他の有料塾に通っていないという条件が設けられています。

 入塾面談では生徒のやる気の確認を大切にしているとのこと。代表自らが、生徒入塾面談で、生徒さんと目を合わせて「やる気はしっかりある?頑張りたい?」と確認をしているそうです。

 


ぶれない生徒ファースト

 定例授業は科目ごとに1対1の個別指導です。生徒と講師の相性は学習効果を高めるためには重要で、相性が良くないと思った時は生徒、講師双方から申し出ることができるようにしています。

 さらに、2023年度から体験を重視した創造学習をスタート。理科実験、プロサッカーチームやオリンピアンの講演などが組まれています。ここでは、生徒同士、自分の担当以外の講師との交流も生まれ、塾としての一体感が作られています。その他には、受験対策としての夏・冬講習会、テスト前自習室。勉強以外にも多くの経験を得る機会として、塾イベント、職業紹介、卒業の会などが企画されています。

 設立から9年目を迎え、卒業生の累計はおよそ100名。ここまで継続できたのは「すべては子どもたちのしあわせにつなげる」という軸がぶれないように運営をしてきたからではないかといいます。

商業施設内の会場は、子どもたちが安心して通いやすい。

 


 1対1の定例授業

様々な話ができ、信頼関係が構築できる。 

最後に

 運営スタッフの方の「生徒たちが大人になった時、あの先生たちは何で毎週日曜日にボランティアしていたんだろうと思い返してもらえたら嬉しい」という言葉が印象的でした。

 卒業生が講師として戻ってきているとのこと、市民の温かい思いが循環していってほしいと思いました。         (さくらい かおる)