全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)
2020年12月。18歳を境に存在する支援制度の狭間で孤立・困窮にしている若者に対して様々な伴走支援を行うことで、若者たちが望む未来に向かっていけるようにサポートをすることも目的に、神奈川県葉山町・横須賀市で設立
活動内容:若年女性専用サポート付きシェアハウス、若者向けアパート型ステップハウス
相談支援、同行支援、住居提供、居住支援、就労支援、情報発信
代表:菊池操さん
取材日:2023年7月7日
取材者名:篠崎みさ子(生活クラブ生協) 菅原順子(NPO法人全員参加による地域未来創造機構)
支援制度の空白を何とかしたい・・・・・・・
代表の菊池操さんに話を伺った。この活動を始めようと思ったのは、小学校や高校の養護教諭をしていた時の教え子たちを初め、多くの若者から悲痛な声や切実な悩みが届いたことがきっかけだった。「両親とうまくいかない」「親からの暴力について相談するところがない」「家出したい」「誰にも相談できない」「行く場所がない」など、家族を頼れない若者、社会の中でだれにも気付かれず追い込まれている若者の現状を知った。
児童相談所や児童養護施設は18歳になるまでが対象で、その年齢を超えた若者を支える制度や団体が少ない。18歳になると、暴力などたいへんな状況を抱えていても家でひたすら我慢するのか、将来への夢も希望も捨てて家出をするかの二択になってしまう。自立した大人になりきれるわけでもなく、“子ども”でもいられない。支援制度の空白を何とかしたいと行動を起こす。
若者の共通した声は、「安心して過ごせる住居や環境が欲しい」ということ。日本は15歳から24歳以下の自殺率が世界1位、30歳以下の女性の自殺率は上昇、若年ホームレスも増加している。これは「家族からのサポートに依存している日本の課題だと思う。教育の網からも家庭の網からも福祉の網からもこぼれ落ちてしまった若者のために大人たちは何ができていたのか。社会の責任だと思っている。若者が“しかたなく“ではなく、“こうしたい!”と選ぶことのできる社会をつくりたい。」と菊池さんは強調する。
安心して過ごせる家を作ろうと決意し物件を借りようとするも、個人では借りられなかった。信頼する友人に「若者が安心して過ごせる“家”をつくりたい!」と話をしたところ、次々に賛同して仲間になってくれた。養護教諭を退いてから2カ月で一般社団法人を取得、この事業を開始した。
「支援」とは対等な関係の伴走だということ・・・・・
支援とは、対等な関係での伴走だということ。「主役はあなた(若者)」、相談者の選択肢を増やすこと、「本人を中心にしたチーム」という考え方で関係機関との連携・協力、若者自身の選択を尊重すること。迷ったらそこに立ち返るということをスタッフの間の合言葉にしている。
スタッフみんなで話し合って一致して大事にしていることは
Respect 敬意 分野を超えて尊敬しあう
JOY 喜び 楽しく、幸せな大人である
若者の自立をサポートし、彼らが望む未来につなげたい・・・・・
サポート付きシェアハウスは女性専用となっているが、単身女性向けの住まいだけでは対応できないことも増えてきた。そこで現在はアパート型ステップハウスを1室運営している。需要も多く、今後、増やしていきたいが、法制度に基づく支援が何もない中で、民間の助成金に資金の大部分を頼らざるを得ない厳しい運営を強いられているため早急な対応は難しい。
厳しい運営の中でも、活動に賛同する人々や毎年一定金額を寄付してくれている法人会員(2社)もあり、活動の後押しになっているという。
「活動に賛同してくださる方々との出会いやつながりを大切にしていきたい。今後は、若者をとりまく環境や社会課題と共にアマヤドリの活動を発信していくことにも、もっと尽力していきたい。」という。
若者が自立していくためには就労支援も重要で、アルバイトや正社員を募集しているタイミングで声をかけてくれる企業もでてきた。企業と連携した就労支援は力を入れていきたい分野だ。同じ女性支援団体、社会福祉協議会、自治体、NPOなど、連携内容の濃淡はあるが、ざまざまな団体とつながり、シェアしあう関係もある。みんなで協力して社会を良くしていきたいので連携しないという選択肢はない。他にも、社会課題を広く知ってもらうために神奈川県知事や横須賀市長、葉山町長に会って現状を話し、提案することや、メディアで現状を伝え課題提案も行う。
主役は若者。関わる人たちどうしが敬意を持ち、尊敬し合う。知恵を出し合い、協力する。誠実、正直でいる。進化、挑戦することで成長しつづける。喜び、楽しく、幸せな大人が若者を幸せにする。このぶれない姿勢、考え方から多くを学んだ。
(篠崎みさ子)