全員参加による地域未来創造機構では2023年度に20のアソシエーションにヒアリング調査を行いました。その内容をアソシエーション情報でご紹介します。(情報は取材時のものになります)
2018年4月から相模原市中央区で活動を開始、経済的理由などで諦めていた日本の伝統的な成長のお祝いである七五三・成人式のお仕度~撮影の体験の提供。出来上がりの写真を見るたび、日本の和文化の良さを知り、地域に愛されているという喜びや自信が自己肯定感の向上に役立ち、未来への飛躍につながると信じて広げていきたいという思いで活動している。
活動内容:相模原市その近隣のひとり親家庭・経済的困難家庭・児童養護施設の子どもたちを対象とした、七五三・成人のお祝いの写真撮影会の支援。
取組の趣旨の理解者を広げ、地域の市民・企業・行政の支援で活動を継続すること。
代表:魔耶さん(石原清美さん)
取材日:2023年7月26日
取材者:桜井薫((公財)かながわ生き活き市民基金)、小林麻利子(神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会)
1.団体の設立に至る問題意識、簡単な経緯、設立者の思いなど・・・・
1)設立の経緯
2018年に世間で騒がれた成人式「はれのひ事件」のニュースを聞き、成人式のお祝いに関わってきた者として許せない気持ちになる。地元の相模原で仕事仲間であった『魔耶写真館』(代表 魔耶さん、創業30年)と『キモノワールドライフ』(代表 齋藤優見さん、創業15年)が「私たちもできる支援を何かしたい!」と考える。日頃のお祝いお支度の現場で子どもたちから「●●︎ちゃんのところお祝いしてもらえないんだって。」と聞くことが多々あり、自己の成長を認める機会、成長の愛の証を残し見返すこと(写真を撮ってアルバムとして残す)は、子どもたちの自己肯定感形成に大きな影響を与えることは仕事の現場から痛いほど身に浸みていた。
2018年に地域の子どもたちのために自分たちのプロのスキルを使ってサポートをしていこうと思いを一つにし、メンバーを募る。経済的困難を抱えた家庭の子どもたちの自己肯定感の低さを向上へとつなげる地域社会作りの実現に向けて「男女共同参画サーラ」の石井代表に相談、「相模原市緑区地域活性化事業」を紹介してもらい申請し、承認された経緯で団体を設立。”一人親家庭”や”経済的余裕のない家庭”を対象に、人生の大切な節目となる「七五三・成人式」のお祝い撮影会を実施する事となった。
2)問題意識
経済的困難を抱えた家庭の子どもたち支援というのは「衣・食・住・勉学」が多く、現在問題視されている自己肯定感向上の視点で「子どもの存在自体を愛でる」といった心の文化体験支援が少ない。日本には素晴らしい七五三や成人祝いという文化がある。「子どもたちが平等に自身の成長を肯定でき、文化的心の余裕と自信に満ちたアイデンティティーを形成し、そして助け合いの和を地域で循環できる社会の実現」に向けて、自分たちのプロのスキルを活かしたお祝い撮影会事業を企画した。
2.ヒアリング担当者の所感・・・・・・・
経済的困難な家庭の支援は「衣食住や学習」が中心であり、社会全体での共感も高い活動になっている。しかし、七五三・成人の和装記念写真への理解は低い。着物を着なくてもいいのではないか?そこまで支援が必要なのかという意見は多く活動への理解が得られないこともあるという。しかし、代表と副代表の二人は、経済的な理由で「撮りたくてもできない」そんな人たちを応援したいという一心で、活動を継続してきている。その原動力となるのは、参加者からのフィードバックだ。はじめから諦めていた子が、おおぜいの人の力によってお仕度ができ、記念写真となって手元に残ることを喜んだり、自閉症の子が最後にスタッフ一人一人にお礼を言いにきたり等の反応から、地域ぐるみで子どもを大切に思っていることを伝えるのは、こうした文化的体験も重要であると確信したという。お二人が言われるように「自己肯定感」を持つきっかけの一つになっていけばすばらしい。年々参加者は増える一方だが、継続のための資金確保が課題となっている。今年から清瀬市が非課税世帯の成人式の衣装レンタルに補助を出すという。同様な活動が全国に広がり継続できるしくみ作りに繋がればいいと思う。
・チラシ配架や寄付集めで、各施設を訪ね歩いたり、飛び込みで挨拶に行ったり等積極的にアピール活動をしながら、市民活動サポートセンターや社協、ユニコムプラザ等、様々な機能を活用してきており、その上で今は、地元の企業にスポンサーになってもらうにはどうしたらいいか、繋いでくれるサポートがあるといいとのこと。
未来機構で、事業性のない市民活動の助成やクラウドファンディング活用後の活動資金の作り方をどうするか考えていけたらと思う。
(桜井薫)
左から斎藤さん、桜井、魔耶さん