藤沢市のNPO法人育ち合いひろば・てとてとては、子どもの成長や暮らしと向き合い、子どもも大人も地域の中で学び合える場所づくりをめざす市民活動団体です。4月18日、その活動の一つ「まちづくりハウス・みろくじ※」で行っているオルタナティブスクール「まなびこ」を訪問しました。 (取材:飯田厚子)
その日のスケジュールもみんなで決める
一日のスケジュールはその日に集まった子どもたちみんなで何をしたいか、何ができるのかを話し合って決めています。授業は学習指導要領を意識していますが、教材は手作り、その日は文章の中から課題とした条件に合う「漢字探し」をやっていました。教科を超えた学びで、異学年の子ども達が一緒に学びます。代表の小川智子さんが授業を進め、その日の補助は池田美幸さん。
一人ひとりの個性や違いを知り認めながら子ども同士で意見を言い合って妥協点を探ったり、前のめりになるほど子どもたちの元気な声と知識の深さに、自ら学びたいという意欲を感じる場面が多くありました。
自らの意思で居場所を見つけられる社会へ
今回、子ども自らが「まなびこ」を選択して通っている姿をみて、人は多様であるので、多様な学びの場がもっと必要であると思いました。自分で選んできている子ども達は生き生きとして楽しそうでした。ここに通っている子どもたちは親の理解や周りの環境もあって、「まなびこ」を選択できましたが、学校に行けない子どもたちが自らの意思で自分の居場所を見つけられるような社会になっていければいいと感じました。
(いいだあつこ)
自ら学ぶ意欲が湧き出る環境を提供する
「まなびこ」は2022年4月に開校しました。暮らしに根ざした生きる学びを伝えること、子どもたちの活動を見守りながら温かい眼差しの中でいのちを育てること、そして「自分で考えて決める」を大切に、受け身ではない、自ら学ぶ意欲が湧き出る環境を提供することを目的としています。
訪問した日は、小学生2年生から4年生の男の子が5名参加していました。「まなびこ」が大切にしている「子どもたちが自ら学び、伸びていこうとする力を信じて待とう」という思いを感じる場面が数多くありました。
楽しく、集中して学ぶ
小川さんが自由な学び場「まなびこ」を始めたきっかけのひとつは、「てとてとて」が毎週木曜日にやっていた「手等子屋わはは」(自由参加の子どもたちの居場所)に来ていた子が「学校に行かない」という選択をしたことでした。居場所だけでなく学ぶ場も必要、どんな場所なら通いたいだろうかと考え、同志たちと話合いを重ね、始めたそうです。
最初は2名から始め、現在は20名ほどが体験登録していて、週4日通っている子どもから、月1回の参加と様々です。週4日通っている子ども達は約10名(月毎に変動あり)。年齢差を考慮し、子どもたちの合意づくりや、授業中は楽しみながらも集中して学ぶことを大切にしていました。屋内での学びだけでなく森や川、田んぼなど野外の体験も多くあり、この日の午後には近くの公園での運動を体育の授業として行っていました。公立学校の出席認定に必要な手続きも行っています。
※「まちづくりハウス・みろくじ」:藤沢市初の空家利活用事業補助金を活用し、現在4団体で借り、共同使用している。通称はみろくじハウス。